【ウクライナ危機】ハルキウ州で保護支援事業を実施しています<後編>
グッドネーバーズ・ジャパン(以下、GNJP) は、2024年11月からハルキウ州において、脆弱な戦争被災世帯への保護支援を実施しています。
ハルキウ州は、2024年5月よりロシアの攻撃がさらに激化し、前線や国境近くの地域が再度ロシアの占領地域となりました。それ以降、新たな避難民が発生し、IOM(国際移住機関)によると、2025年2月時点で、ウクライナ国内で最も多い392,191人の国内避難民を受け入れています。*
今回は、現地で心理社会的支援(心のケア)を行う心理士スタッフから届いたメッセージを中心に、現在のウクライナにおける心理社会的支援の重要性をお伝えします。
ケースマネジメントや現金給付についてご紹介した前編記事はこちら
*Ukraine — Area Baseline Assessment — Round 39
※本事業は、ジャパン・プラットフォームの助成により実施しています。
心理社会的支援とは
戦争や自然災害で被災した方を対象とした心のケアのこと。当事者の方々が心理社会的支援を通して心の傷に向き合うことで、心的外傷後ストレス障害や急性ストレス障害、大うつ病などトラウマ関連の精神疾患を予防することにつながります。

GNJPはハルキウ州で実施する保護支援事業の中で、大人を対象に心理士によるカウンセリングを行い、人々が心の傷と向き合い、尊厳ある生活を取り戻すためのサポートをしています。
本事業で心理士として働くユリアさんは自身もハルキウで暮らしながら戦争を体験しており、様々な出来事を経て、心理士として困っている人を支援することの重要性を実感しています。
ユリアさんからのメッセージを紹介します。
2025年2月末までに、当初の計画を超える738名が本事業を通してカウンセリングを受けました。
事業を行う心理士やスタッフへの研修
また、同じく心理士として本事業に従事しているスヴィトラーナさんは、ハルキウの人々が置かれている状況を動画の中で詳しく説明してくれています。
こうした状況により、人々は心理社会的支援だけでなく、医療的な支援や、薬を購入するための経済的支援も必要としています。GNJPの保護支援では、先日ご紹介したケースマネジメントや保護のための現金給付の活動と組み合わせ、人々が個々に必要としている適切な支援を受けられるようサポートしています。
また、心理社会的支援の活動の幅を広げるため、ハルキウ州で活動する心理士向けにGNJPのスタッフが研修を実施しました。この研修には、本事業に専従するハルキウ州の心理士の他、ドニプロペトロウスク州でも戦争被害者の心理社会的支援にあたっている心理士や現地NGOスタッフの計15名が参加しました。

研修の参加者からは、研修機会への感謝とともに、次のようなコメントが寄せられました。
心理士のヴィクトリアさん
子どもに関わりのある方たちとたくさん出会い、その経験やストーリーを聞けたことは、私にとって非常に重要でした。特に、困難な背景を抱えた子どもたちと向き合っているハルキウ出身の女性たちの情熱的なエネルギーは、今の私にとても必要なものでした。歌を使ったアクティビティでは、団結感を強く感じ、力をもらいました!今私は、このプログラムの実践的な導入方法を考えているところです。子どもだけではなく大人も対象に、とにかく早く実践に活かしていきたい気持ちでいっぱいです。
ケースワーカーのカチェリーナさん
特に印象的だったのは、一見シンプルな方法が実はとても奥深く、心のケアに効果的だった点です。トラウマ体験に向き合うと強い感情が湧き上がり、気分にも大きな変化がありました。研修で学んだ方法の効果を裏付けるものだと感じましたし、自分自身のトラウマに対して深い理解と気づきを得ることができました。 このプログラムは、年齢を問わず、トラウマに関わるすべての支援者におすすめできます。早速、「写真描画法」のセッションを大人を対象に試してみましたが、非常に効果を感じました。近々行う予定の子ども向けイベントでも、研修で学んだ手法をいくつか取り入れてみたいと思います。
ローカルNGOワーカーのヤナさん
研修で学んだメソッドは創作活動と治療を融合させたもので、対象者はこれらの活動を通して安全に感情を表現し、不安を和らげ、回復に向かう力を自分自身の中に見出すことができます。特に感動したのは、写真描画法、テーマに基づいた絵画、粘土細工、ジオラマ制作、音楽ワークショップなど、多様な技法で自分の体験を整理し、グループでの交流を通じて支え合う力を生み出していたことです。これは単なるアクティビティの集まりではなく、感情に深く働きかけ、確かな成果をもたらす、よく練られたシステムだと感じました。心理士と連携して、子どもにも大人にもこの手法を用いたセッションを行っていく予定です。
本研修の講師を務めたGNJPスタッフのアナスタシアさんは、研修を終えた感想を次のように話しました。

研修は安心感と親しみやすさのある雰囲気で進んでいき、参加者は熱心にアクティビティに取り組み、積極的に質問をし、自分自身のストーリーを共有してくれました。中にはつらい体験を共有してくれた参加者もいて、研修が彼女たちにとってセラピーのような役割も果たしたと思います。研修後にはポジティブなフィードバックがたくさん寄せられ、「自分たちの仕事に生かせる新たな知識や発見を得られた」「これまで話さ会なかった出来事や感情について話すことができた」と語ってくれました。 ウクライナでは依然として心理社会的支援が必要とされる状況にあります。特に子どもたちは、国の未来を作っていく存在であり、また人格形成の過渡期でもあるので、精神的なケアを行っていくことは非常に重要です。
おわりに
ハルキウ州では現在も攻撃が続いています。平穏で自立していた日常を奪われたまま3年以上が経ちました。その状況下で生き抜くには、様々な困難が立ちはだかります。
その状況や課題は人によって様々に異なるため、グッドネーバーズ・ジャパンはこのような複合的支援を実施してきました。これからも、より多くの人が少しでも安心して日々の暮らしを営んでいけるよう支援を行ってまいります。
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