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2025.04.18 活動報告

【令和6年能登半島地震】子どもたちへの心理社会的支援を行いました＜後編＞

2024年10月から2025年3月まで七尾市の小学校2校の児童を対象に心理社会的支援（Psychosocial Support, 以下PSS）を実施しました。6か月間に渡る活動の様子を前編・後編に分けてご紹介いたします。
後編では、第2ステージである粘土やジオラマを用いた三次元表現、第3ステージである音楽や映画制作を通した四次元表現についてお伝えします。

「前編」の記事はコチラをご覧ください

※本事業は、ジャパン・プラットフォームの助成を受け、特定非営利活動法人「地球のステージ」の監修のもと実施しています。

［第2ステージその1］粘土で表現する

プログラムの第2ステージでは、平面から立体へ、よりリアルに心と向き合っていきます。

粘土を用いた活動では、絵と同様に全3回、「好きなもの・こと／嫌いなもの・こと」、「大切なもの、こと」、「忘れられないあの日」というテーマで行いました。
「大切なもの・こと」では、命や友達・家族を表現する子や、今の生活に関するお金や食べ物、野球道具やサッカーのスパイクを作る子がいました。
「忘れられないあの日」では、ひび割れた地面、傾いた電柱を表現した子がいました。「能登半島地震。家の前の地面がひび割れてくずれた。通れなくなった。アラートが鳴って怖かった。今は全部直って安全になった。」と語りました。

プログラム開始から1カ月程経った頃になると、子どもたち同士やスタッフともだいぶ打ち解け、運動会で踊ったダンスを披露してくれたり、空き時間に一緒にカードゲームをしたりとより良い関係を築くことができました。

［第2ステージその2］ジオラマ制作

ジオラマ制作ではテーマを「理想の町」とし、6名ずつの2グループで取りかかりました。
最初にどんな町がいいか、その町に何があったらいいか、子どもたちの意見をもとに、町の構想を決めます。

田鶴浜では、”みんな笑顔”、”楽しい”、”防波堤”、”コンビニ”、”遊び場”といった様々な意見が出て、最終的に「安全で願いが叶う町」「生き返った田鶴浜」がコンセプトとなりました。

能登島では、”田舎と都会どちらもある”、”ゲームの中のような世界”、”税金がない町”、”人がたくさんいる町”などの意見が出て、最終的に「オールシーズン遊べる町」「みんな笑顔の能登島」がコンセプトとなりました。

60cm×60cmのボードに、町を設計し、粘土で自然や建物を表現していきます。完成後には、保護者の方や学校の職員の方、地域の方を招いて、発表会を開きました。子ども一人ひとりが、ジオラマに込めた思いや注目してほしいところを発表しました。

2025年の年明けはじめのプログラムでは、「はりがねの人生」を行いました。
これは、自分の人生を振り返り、その意味を考えていくという目的があります。人生の良いこと悪いことを1本の針金を折り曲げて表現します。

4年生の子が語ってくれたはりがねの人生

・生まれた ↗

・2023年満喫 ↗

・2024年1月1日16時10分地震があった。家は大丈夫かなと思って、家に戻ったら壊れていた ↘

・避難所に行って、空き家に住んだ ↘

・仮設住宅に入って自分の家ができて嬉しい ↗

・給食当番でショック ↘

・友達と雪合戦して楽しかった ↗

［第3ステージ］映画制作で他者を演じる

最終の第3ステージ「四次元表現」では、映画制作に取り組みました。
映画制作というアプローチについて、本プログラムを監修する桑山医師は「トラウマにさいなまれ、自己肯定感の低下や孤独感、孤立感を抱え想像力や心の自由が失われています。そこで自分たちで物語を考え、他人になって演ずることで想像力を取り戻していきます。」と述べています。

どんな映画にしたいか、自分が住む地域の人に映画を通して何を伝えたいか、子どもたちの思い、アイディアをもとに、シナリオを作成しました。映画は演者だけでなく、タイミングを知らせるカチンコ役や、道具を運んだり照明を持ったりするアシスタント役などもあり、子どもたち一人ひとりがその大切な役割を担いました。

そして、読み合わせ・撮影場所のロケハンを行い、いよいよ撮影です。
1時間半と限られた撮影時間の中、セリフや動きを覚えて臨んだ撮影は、慣れていないこともあり1シーンに8テイク撮ったこともありました。ちょうど寒波と重なったときには、吹雪の中で撮影をすることもありました。

そうして出来上がった映画が「はまっこレンジャー」と「金のバナナ」の2本。撮影に参加した子どもたちの保護者や学校職員、地域の方々を招いて上映会を開きました。

舞台挨拶も行い、登壇した子どもたちは多くの来場者の前で、制作にあたっての想いを一人ひとりしっかりと話しました。来場者の方から、「子どもたちの思いや願いを知ることができて良かったです。辛かったこと、怖かった思いを声にすることは子どもたちにとってなかなか難しいことだったりするけれど、声に出すことの大切さがわかりました。」「子どもの心のケアについて親でもどうしたらいいかわからない中、このような活動があり、すごく助かりました。毎週楽しみにしていて、表情も明るくなったと思います。」という声を多数いただきました。

おわりに

2024年10月～2025年3月まで実施した心理社会的支援プログラムの様子をお伝えいたしました。
本プログラムにより段階的な表現・創作を重ねることで心の整理が進み、震災の経験と向き合うためのエネルギーを得ることができます。その成果は、すぐに目に見える形で表れるものではないかもしれません。いつか子どもたちが大きくなったときに、自分自身で価値づけしてくれるものだと考えています。
そして、制作した映画が私たちの手を離れてひとり歩きをして、観てくださった方がご自身の経験と向き合うきっかけとなったり、どこか別の地域で上映会が開催されたりしながら、みなさんに力を与えてくれる、と信じています。

私たちグッドネーバーズ・ジャパンは、今後も引き続き被災地域で支援活動をしてまいります。

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