「230円の昼食も高い」 厳しい暮らしの中、食品支援が大きな支えに ~グッドごはん利用者へのインタビュー~
グッドネーバーズ・ジャパンは、日本国内の子どもの貧困対策として、ひとり親家庭への食品支援事業「グッドごはん」を運営しています。 当団体は、グッドごはんを利用する家庭に寄り添った支援を行えるよう、利用者の声を聞くことを大切にしています。
今回グッドネーバーズ・ジャパンのスタッフが、中学校と保育園に通う二人のお子さんと暮らす利用者の友美さん(仮名・30代女性)へインタビューを行い、暮らしの様子やグッドごはんへの印象などについてお話を聞きました。
友美さんは元配偶者と離別後、13歳の長男・5歳の長女と暮らしています(年齢はインタビュー当時)。
子育てをしながら、フルタイムの契約社員として働いています。非課税世帯ではなく、所得税等が控除された後の就労収入は手取りで月に16~18万円ほどです。そのほか、児童扶養手当や児童手当を1か月あたり計6万円ほど受給しています。
子どもの父親から養育費は受け取っておらず、経済的に余裕のない暮らしを余儀なくされています。

――毎月グッドごはんを利用されている中、食品を受け取った時のお子さんたちの反応はいかがですか。
友美さん 二人とも、食品が入った袋に飛びつきます。反応が本当にすごくて、その様子を見ていただきたいくらいです。娘なんて、食品を見て「これ、ほしかったやつー!」と言って喜んでいます。
――よかったです。特に受け取って嬉しい食品はありますか。
友美さん やっぱりお米が嬉しいですね。それから、お肉も助かります。子どもたちはお肉が大好きなんです。そぼろ食べたいとか、牛肉食べたいとか、肉の種類の指定までしてくれるくらい好きで。ですが、家計が厳しいので、お肉を買うのは私のお給料日のときだけです。月に一度のその日だけお肉を買って、食卓に出しています。
以前グッドごはんで冷凍のチキンを頂いたときは、子どもたちが「うわぁ!」と喜んで、一瞬で食べきりました。私も、1個食べられて幸せでした。
――そうだったのですね。近頃は物価高の影響もあり、たくさんのグッドごはん利用者の方が食事の用意に苦労されているので、私たちも懸念しています。
友美さん 物価高の影響は本当に大きいです。野菜も買えませんし…。そんな中、収入は変わらないので、お給料を上げていただけないか職場に交渉しているところです。
フルタイムで働いても、ままならない暮らし
――物価高の一方、お給料が変わっていない状況なのですね。今の職場では、どのような形態で働かれているのですか。
友美さん フルタイムの契約社員として働いており、11年目になります。5年目に時給が25円上がったのですが、それ以降一度も昇給はなく、今の時給は1,475円です。
より良い条件で働けたらと思い、転職を考えて求人を調べたりはしているのですが、今の仕事で1日に長時間拘束され、求人の面接などに行く時間をとることができません。
木曜日は午前中で仕事が終わりますが、午後は子どもの学校行事や病院の付き添いなど、平日でなければ対応できない用事や家事に充てる必要があります。また、土曜日の午前中も勤務があるので、自由に動ける時間が限られており、思うように転職活動が進められていない状況です。
――時給制の場合、勤務した時間分のお給料が支払われるので、お仕事を休みながら転職活動をすることも難しいご状況だと思います。今のお仕事の拘束時間が長いとのことですが、1日に何時間ほど勤務されているのでしょうか。
友美さん 終日勤務する日は、午前は8時15分~12時15分、お昼休憩を挟み、午後は2時45分~6時45分の計8時間が基本的な就労時間です。全体の拘束時間としては10時間半ですね。
――お昼休憩が2時間半もあるのですね。どのように過ごされているのですか。
友美さん 休憩の時間が少し長いので、一度帰宅して家事をしたり、近くに住む高齢の父の様子を見に行ったりしています。職場の人から社員食堂に誘われたらその場には行きますが、食事が230円からで、私にとっては結構な値段です。なので自分は食べず、お茶で済ませることがほとんどです。
――お昼ご飯を召し上がらず、そのまま午後の仕事をされることが多いのですね。
友美さん そうですね。残業がある日も多く、退勤後に娘を保育園へ迎えに行き、帰宅するのは夜8時頃になります。
――帰宅後はどのように過ごされているのですか。
友美さん まず、子どもたちに夕食を食べさせます。娘は保育園で食べてきてはいるのですが、お家で一緒に食べたいみたいで。どうやら保育園で18時以降に残る子は少ないらしく、保育園での夜ご飯の時間が寂しいから、お家でみんなと食べたいと言っています。

――お母さん、お兄ちゃんと一緒に食べたいのですね。
友美さん そうですね。ただ、私は夕食をとらない日もあるんです。経済的なこともあり、我が家では1日に炊けるお米は3合までと決めているので、私の分を削るときもあります。
そうして夕食の時間が終わると、寝るのは22時、23時頃になってしまいます。通園のため娘は翌朝6時半に起きなければなりません。なので、早く寝かせようと電気を暗くすると、息子が学校の勉強をできなかったり。一つしかない部屋で3人一緒に過ごしているので引っ越したいのですが、予算内の家賃でなかなか物件が見つからず、公営住宅の抽選にも毎回外れている状況です。
――住居の面でもご苦労があるのですね。他にご心配・不安に感じていることはありますか。
友美さん ひとり親という理由で差別をされていると感じることがあり、残念に思っています。たとえば、息子がお友達から食事に誘われて「行けない」と言うと、周りは息子がひとり親家庭だと知っているので「お前の家は貧乏だからな」という反応をされることがあるそうです。そういった状況もあり、ひとり親だということを周りに知られないようにするために、私はあまり人と積極的に交流しないようにしています。
――ひとり親という理由で、そのような反応をされることがあるのですね。
友美さん はい。ひとり親に対する差別がなくなればいいなと思います。
「申し込んでよかった」 食品支援への思い
――グッドごはんの食品配付について、もし何かお感じになっていることがあれば教えてください。
友美さん 実はグッドごはんに初めて申し込もうとしたとき、「本当に無料で受け取れるのだろうか?」という気持ちも少なからずあり、活動についてたくさん調べました。そうしたら、ホームページや申し込み方法などがしっかり整えられていて安心できると感じ、申し込んでみることにしました。
――そうだったのですね。実際に利用されてのお気持ちはいかがでしょうか。
友美さん あの時勇気を出して申し込んでよかったです。この支援がなかったら、自分たちはどうなっているのだろう?と感じます。私たちが生きているのは支援者の方々のおかげだと、本当に思っています。
――少しでもお力になれているのでしたら嬉しく思います。お話を聞かせてくださり、ありがとうございました。
今回は、グッドごはんを利用する友美さんへのインタビューをお届けしました。
友美さんのように、働いているものの十分な収入が得られず、食事すら諦めざるを得ない低所得家庭は少なくありません。
子どもたちやその親が健やかに暮らす上での基盤となる食を支えるため、当団体は今後とも精一杯グッドごはんの活動を継続してまいります。
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