【エチオピア】紛争を経験した子どもたちの平和への想い 〈平和に共存する国際デー 前編〉

5月16日は、国際連合が定めた「平和に共存する国際デー(International Day of Living Together in Peace)」です。これは国や文化の違いを超えて多様性を尊重し、対立をなくし、平和や連帯、調和を呼びかける日です。この日に合わせ、グッドネーバーズ・ジャパンがエチオピア南部で実施している平和構築事業の取り組みを2回にわたって紹介します。
前編では、エチオピア南部の小学校の子どもたちが積極的に参加しているピースクラブ活動の現場から、子どもたちの声を通じて、平和教育がどのように地域社会に広がっていくのかをお伝えします。
この地域では、2018年の民族紛争や近年拡大している干ばつや洪水により、多くの人々が家と生計手段を失いました。そのような厳しい環境の中、グッドネーバーズ・ジャパンは持続可能な平和の実現を目指し、2023年から生計向上と社会的結束、社会統合を中心とした平和構築支援を行っています。この取り組みは、地域住民が自立し、また異なる民族が理解しあうことで、平和な未来を切り拓く手助けとなっています。
※本事業は、外務省「日本NGO連携無償資金協力事業」です。
子どもたちが自ら作り上げた平和の表現
南エチアピア州ゲデオ県の小さな村にあるHarumufo(ハルムフォ)小学校。この学校では子どもたちが「平和とは何か?」というテーマに向き合い、日々話し合いや発表、地域での活動に取り組んできました。
「平和とはなんだろう?」
「争いはなぜ起こるんだろう?」
「もし争いが起きたら、どうすれば平和的に解決できるのだろう?」
私たちはそのような問いを出発点に、子どもたち自ら平和について考え、行動する力を育む平和教育活動を進めています。本事業では、これまでのべ30校で子どもたちと一緒に「平和」について、話し合ってきました。子どもたちからは、「平和とは友達とサッカーができることではないか」、「学校で学べることではないか」、「争いが起きたら村の長老がやっているみたいに話し合いの場を開こう!」など、たくさんの意見が出てきました。

2024年10月から11月にかけて、今年度の対象校である15の小学校で平和教育が実施されました。各校には課外活動として、ピースクラブが存在しており、本事業ではピースクラブに対して平和教育の実施、平和のためのアクションプラン(目標)の策定、目標に向けた行動をサポートしてきました。
2025年2月には、グッドネーバーズ・ジャパンのスタッフ、現地の教育局の担当官、そして校長先生によって、目標の達成度が評価され、各県ごとの優勝校が選ばれました。
特に印象的な活動を行い、県内7校の中から最も優れた取り組みをした学校として選ばれたのがハルムフォ小学校のピースクラブです。この学校では、10人のピースクラブのメンバーたちが平和をテーマにした歌や詩を創作しました。さらに対話による問題解決を描いたオリジナルの劇を制作し、全校生徒の前で披露しました。
劇の内容は、意見の食い違いから喧嘩に発展する2人の男の子と、間に入って両者の声を聴き、対話で解決へ導く女の子の物語です。暴力ではなく話し合いという選択肢の大切さを、観る人に優しく、そして力強く伝えるものでした。
心に残る、子どもたち自らが作り上げた平和の作品は、校内だけでなく村の人々にも披露され、地域全体の平和の普及活動として広く共有されました。
一歩踏み出したピースクラブのメンバー
ピースクラブの活動は平和の普及活動にとどまりませんでした。クラブのメンバーたちは、地域の中で特に支援を必要としていた3家庭に対して、合計50キログラムのトウモロコシの粉を、また両親のいない4人の子どもに学校で必要なノートを8冊ずつ計32冊、届ける活動を行いました。
活動に参加したクラブのメンバー、エフレムさん(6年生の男の子)は次のように語ってくれました。
「私は彼らの喜ぶ顔が忘れられません。家を訪れて、トウモロコシの粉を渡すと、本当に感謝してくれて、祝福の言葉をもらいました」(エフレムさん)
この活動は、生徒や教員が自発的に50ブル(約60円)ずつを寄付したことによって実現しています。エフレムさんも自分のお小遣いを寄付しました。
「お菓子を買おうなんて思いませんでした。自分は家族と一緒に毎日3食食べられる。それだけで十分に恵まれていると感じています。だからこそ、自分にできることで誰かの助けになりたいと思いました。」(エフレムさん)

同じく活動に参加したベテリヘムさん(5年生の女の子)も次のように話してくれました。
「聖書に『貧しい人、弱い人を大切にするのは神様に貸すのと同じです。神様がそれに報いてくれます』と書いてありました。それを思い出して、迷わず寄付をしました。」そして「学校にいる孤児の子は、教科書や服が必要だと思うので、今後も活動を続けていきたいです」(ベテリヘムさん)
また、あなたにとって平和とはなんですか?と二人に聞くと、こう答えてくれました。
「平和とはすべてであり、どこにでもあるもの」(エルレムさん)
「平和とは生きること」(ベテリヘムさん)
現在、ハルムフォ小学校ピースクラブのメンバーは10名ですが、少人数だからこそ一人ひとりの思いが強く、それが行動にも現れているのかもしれません。
彼らの素晴らしい活動、そして優勝を称え、グッドネーバーズ・ジャパンから小学校へ音響セットを贈呈しました。この音響セットは、ピースクラブの子どもたちが制作する劇や歌に使用され、活動の質を向上させるための重要な役割を果たしています。
今後、地域のイベントや学校での発表の場に活用され、子どもたちのメッセージがより広がり、多くの人々に届くことが期待されます。

担当スタッフより
彼らの言葉の奥にあるのは、幼いながらも真剣に世界と向き合うまなざしと、自分にできることを見つけ、実行する力です。ハルムフォ小学校のピースクラブが成し遂げたことは、単なる学校活動の範囲にとどまりません。それは、困っている人を助けたいと思う気持ちを行動にした、勇気ある、そして確かな平和への一歩でした。
この学校の一人ひとりの生徒には、地域を、そして未来を変えていく力があります。今回の活動をきっかけに、多くの生徒が「自分にもできることがある」と気づき、これからも平和のための小さな一歩を歩み続けてくれることを願います。
後編では、家畜支援を受けて自立を果たし、地域の平和的共生に貢献する人々の声をお届けします。
グッドネーバーズ・ジャパンは引き続き、子どもたちが安全に、平和に、笑顔いっぱいに生きていける世界を目指して、皆さまの温かいご支援のもと活動を続けていきます。今後とも、温かいご支援とご協力のほど、よろしくお願いいたします。
※ 本文中に記載の為替レートは2025年5月時点のものです。
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