【エチオピア】難民と地域住民の共生と自立を支援：起業支援と平和構築の取り組み
エチオピアは、南スーダンやスーダン、ソマリアなど、紛争が多発する周辺国から97.2万人以上の難民を受け入れており、アフリカで3番目に多く難民を受け入れている国となっています（2024年2月時点、UNHCRの報告より）。
2023年3月から12月にかけて、グッドネーバーズ・ジャパンはエチオピア西部のベニシャングル・グムズ州アソサ県において、南スーダンおよびスーダン難民と、ホストコミュニティ（難民を受け入れる側の地域住民）の双方を対象に、生計向上支援事業・平和構築事業のフェーズ1を実施しました。
※当事業は、ジャパン・プラットフォーム助成の南スーダン難民緊急支援事業です。
生計向上支援
本事業の対象地であるツォレ難民キャンプでは、多くの難民は収入をほとんど得られず、ビジネスや農業などを行うために必要な土地も持っていないため、外部からの援助に頼らざるを得ない状況にあります。
このような状況を改善するために、グッドネーバーズは同キャンプの難民に起業支援を実施しました。支援の一環である研修を通じて、難民はビジネスを行うために必要なスキルを学びました。自らの起業計画を立てた後、ビジネスを始める上での起業資金を一人当たり平均で約14,010ブル（約34,885円）受け取りました。これらの資金を元手に露店の整備や商品(砂糖、コーヒー、石鹸など)の仕入れ、重量計の購入などを行いました。並行して、難民がキャンプ内でビジネスを行うための場所として、市場施設を建設しました。
その後、起業支援を受けた難民は売店や理髪店、レストランなどのビジネスを始めることに成功しました。その結果、支援を受ける前と比較して、支援対象者の平均月収が約70%増加しました。売店を始めたAさんは、「売れ行きがとてもよく、商売が繫盛していて嬉しいです。お客さんと丁寧に接することでキャンプの中で信頼される売店となるよう目指したいです」と笑顔で語っていました。
また、同難民キャンプ周辺のホストコミュニティも、国内の他の地域に比べると開発が遅れています。そこでグッドネーバーズはホストコミュニティの一つであるドゥンガ・アルメラ村に対し、製粉所の建設と製粉機の設置を支援しました。
この地域では、トウモロコシなどの主食を粉末化して食べることが一般的であるため、製粉はホストコミュニティ・難民双方にとって必要不可欠です。ホストコミュニティはグループでこの製粉所を運営し、他地域住民と難民の両方に製粉サービスを提供し、収入増加につなげています。
さらに、難民とホストコミュニティに対する農業支援を実施しました。支援の対象となった人々は、研修にて農作業の技術などを学び、農地や改良種の提供、トラクターの貸し出しなど、生産性を向上させるための支援を受けた後に、農業を開始しました。昨冬には収穫作業が行われ、収穫したメイズ（現地での一般的な主食）は支援対象者間で平等に分配されました。その結果、支援を受ける前と比べ、支援対象者の平均月収は、3倍近くにまで増加しました。
事業前のデータでは、支援した難民の73%が政府による配給に全面的に依存していました。そのため、これらの生計向上支援は、難民が新たな生計手段を得て支援依存から脱却するきっかけとなりました。
平和構築支援
本事業の実施前、同地域では盗難事件や、難民が周辺地域から木材を集めてしまうなどのトラブルが起こることがあり、難民とホストコミュニティはお互いに不信感を持っており、両者の間には緊張関係が見られました。両者が定期的に集まる機会がなかったため、問題が起こるとすぐに平和的に解決することができず、小競り合いに発展してしまっていました。
そこで本事業では、難民とホストコミュニティの代表者から構成される共同委員会の活動を通じて、両コミュニティが平和的に共存するための仕組み作りを行いました。この共同委員会を通して住民同士の交流の機会を増やし、相互理解の促進や信頼関係の構築を目的とした活動を行いました。
共同委員会は事業期間を通じて平和的対話セッションを実施しました。難民とホストコミュニティとの間で発生している問題とその解決方法、そして予防策として委員会ができることについて議論されました。
また共同委員会メンバーは、平和的対話セッションを通じて得た学びや平和的共存の重要性を広めるため、自分が所属するコミュニティにて、啓発活動を実施しました。ある難民側の委員会メンバーは、啓発活動に参加した難民に対し、「ホストコミュニティの人たちは私たちに対して土地や水などを分けてくれています。私たちは自国の紛争から逃れ平和を求めてエチオピアに来たのだから、彼らと争うのではなく、一緒に平和的に過ごさなければいけません」と呼びかけました。
最後に、共同委員会が企画・運営を行い、難民とホストコミュニティの一般住民向けの交流イベントが2回開催されました。イベントには1,000人以上の難民とホストコミュニティの一般住民が集まり、サッカーや陸上競技、伝統音楽のパフォーマンスが催されました。
普段交流機会の少ない双方の住民が、イベントを通じて楽しい経験を共有したことにより、それまで持っていたネガティブな感情が弱まり、相互理解の促進に繋がりました。イベントに参加した難民の一人は、「難民キャンプに来てから、ホストコミュニティの人たちと一緒にこれほど楽しいイベントに参加したのは初めてでした」と感想を述べていました。
フェーズ1事業の活動成果
生計向上支援
・34人の難民に対する起業支援
・難民がビジネスを行うための市場施設の建設
・難民80世帯とホストコミュニティ10世帯に対する生計活動を拡大するためのローン支援
・ホストコミュニティが運営する製粉所1か所の新規設立
・難民101世帯とホストコミュニティ121世帯に対する集団農業支援
平和構築支援
・難民とホストコミュニティの代表者から構成される共同委員会メンバーと関係者30人に対するワークショップの実施
・難民とホストコミュニティ間で平和的対話セッションを14回実施
・各コミュニティで平和的共存に関する啓発活動を21回実施
・平和的共存に関する啓発資料４種類を作成、配布
・難民とホストコミュニティの一般住民が交流するイベントを2回開催
フェーズ2事業の概要
グッドネーバーズは、フェーズ１事業と同じツォレ難民キャンプと周辺のホストコミュニティにおいて、2023年10月からフェーズ2事業を実施しています。以下のとおり、フェーズ2においても、難民とホストコミュニティの双方に対する生計向上支援と平和構築支援を継続しています。
生計向上支援
・ホストコミュニティにおける貯蓄信用組合の新規設立（新規）
・180人の難民に対する畜産支援（新規）
・36人の難民に対する起業支援（継続）
・ホストコミュニティの多目的協同組合のサービス強化（継続）
平和構築支援
・共同委員会と警察・司法関係者との定例会議（新規）
・難民とホストコミュニティの共同委員会に対する実務研修（継続）
・両コミュニティ間による平和的対話（継続）
・各コミュニティでの啓発活動（継続）
・交流イベントの開催（継続）
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