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2023.09.26 活動報告

【ウクライナ危機】「つらい体験も人生の糧に」子どもたちを支える現地職員にインタビュー 第1回

長引くロシアによるウクライナ侵攻により、依然として多くの人々が避難生活を送っています。

グッドネーバーズ・ジャパン(GNJP)では、戦争の発生直後より食糧支援や越冬支援などの緊急支援活動を行ってきました。これらの支援活動に加え、2023年6月からは避難者を対象とした心理社会的支援(Psychosocial Support, 以下PSS)※ をルーマニアにて行っております。

紛争に巻き込まれると、恐怖体験に遭遇したり家族との離別を経験したりと不安定な生活を強いられます。その結果、人々は不安やストレスを抱えてしまい、その心の傷はPTSD(心的外傷後ストレス障害)に発展する可能性もあります。PSSは、心のケアを行うことでPTSDを予防し、心の傷の回復を支援する活動です。

※本事業は、ジャパン・プラットフォームの助成、を受け、認定NPO法人「地球のステージ」のスーパーバイズのもと実施しています。

今回、ルーマニアでGNJPのPSSを担当する、ウクライナ出身のアナスタシアさんにお話をお伺いしました。

「つらい体験も人生の糧に」

―― グッドネーバーズでPSSに携わるようになった経緯について教えてください。

アナスタシアさん グッドネーバーズで働き始めたのは2022年の4月です。戦争が始まる前は大学で勤務していましたが、戦争が始まると、私は難民となりました。仕事もなく、精神的にもつらい時間を過ごしていたところ、グッドネーバーズのスタッフが声をかけてくれました。ウクライナの人々の力になれることがしたいと思い、グッドネーバーズで働くことを決めました。ここで働くまではPSSに携わった経験はなかったので、学びながらのスタートでした。

―― GNJPはどのようなPSSを行っているのでしょうか。

アナスタシアさん ウクライナから避難してきた子どもたちを対象にワークショップを実施し、過去の体験を振り返り、向き合う機会を設けています

―― ワークショップではどのようなことを行いますか?

アナスタシアさん ワークショップでは様々な創作活動を行います。初期の段階では、絵を描いたり写真や粘土を使ったりして、トラウマとなる体験を思い出し、記憶や感情を整理します。そして、自分自身のトラウマをストーリ化して、そのストーリーを伝え合います。その次の段階では、グループでジオラマを作成したり、歌詞を作ったりします。お互いの経験を反映して、自分たちのストーリーを表現します。こうして、子どもたちは段階的に自身の体験と向き合うのです。

ワークショップでお絵描きをする子どもたち

先日行われたワークショップでは、「忘れられない日」をテーマに絵を描きました。ある6歳の女の子は、戦闘機が上空を飛んでいる様子を描きながら、戦争で祖父を失った話をしてくれました。

このワークショップはトラウマのケアとPTSDの予防を目的としていますが、つらい出来事も人生の一部であること、その体験がこれからの人生の糧になることも伝えていきたいです。

助けを求めず、辛い気持ちを抱え込む人も

―― どのようなときに活動のやりがいを感じますか?

アナスタシアさん 子どもたちの変化が見られたときはやはり嬉しいです。初めは他の子どもたちの話に興味を示していなかった子が、ワークショップに通い続けた結果、他の子どもたちの発表にちゃんと耳を傾けるようになった様子を見た時は、心の状態の変化が感じられてとても嬉しかったです。そういった変化を見て、また頑張ろう、と思います。

子どもたちの変化が見られることがアナスタシアさんの原動力です

―― 活動を行う中で困難なことはありますか?

アナスタシアさん ワークショップの計画を立てるのが難しいです。私たちが活動拠点としている場所は、ウクライナ国境に近く、人の往来が激しい場所です。ルーマニアで長期的な生活基盤を築くことの難しさなどから、ウクライナに戻る子どもたちもいます。子どもたちの参加が不定期かつ断続的なので、長期的に支援を行うことや計画を立てるのに困難を感じています

――段階的に支援を行うため、参加者が一定していないと準備も難しそうですね。では、ウクライナ避難民の方々と関わる中で、アナスタシアさんが今懸念していることはありますか?

アナスタシアさん そうですね、助けを求めない人がいることです。国民性もあるのでしょうか、ウクライナの人たちは不安や辛い感情を表に出さず、気丈にふるまう人が多いんです。だから、トラウマとなる体験について語らず、一人で抱え込んでしまう人、助けを求めない人がいるんですね。

先日、ウクライナから避難してきた一人のお母さんにインタビューをする機会がありました。彼女は妊娠中にルーマニアに来て、こちらで出産したのですが、「将来自分で理解するときが来るから」と子どもたちに戦争の話をするのを避けているそうです。そのお母さんが、インタビューの中で戦争の辛い体験を思い出して泣き出してしまったとき、子どもたちは「なんで泣いているの」と声をかけました。しかし、お母さんは「大丈夫、大丈夫だから」と答えるだけで、自身の辛い気持ちや体験については語りません。

彼女は子どもたちに心配をかけたくないのかもしれませんが、このままでは心に傷を抱えたまま日々を過ごすことになります。こういった人々にこそ、支援が必要だと考えますし、過去の体験と向き合うことが大事であることを伝えていきたいです

今後の活動について

――これからはどのような活動を行っていきますか?今後の課題などはありますか?

アナスタシアさん まだまだ多くの子どもたちが心のケアを必要としているため、これからもPSSを継続していきます。それから、子どもたちの変化や成長を見てもらう機会を増やしていきたいです。保護者の方々だけでなく、日本の皆さんにも、子どもたちの発表や制作物を見てもらいたいですね。

また、年長の子どもたち(中学生以上の子どもたち)を対象としたプログラムも展開していきたいと思います。私たちのプログラムに参加しているのは5~12歳の子どもたちがほとんどなのですが、最年長は17歳の子です。プログラムは小学生向けのものが多いので、中学生以上の子どもたちが楽しめるものも行っていきたいです。

現在は、主に子どもたちを対象とした支援を行っていますが、保護者など大人への支援も必要です。保護者向けのワークショップを開催したことはありましたが、継続的な実施はできていないので、今後検討していきたいです。

あとは、ウクライナ国内に留まる子どもたちへの支援も必要だと考えています。ウクライナから国境を越えて避難してきた子どもたちや国内で避難している子どもたちだけでなく、避難をせずに留まっている子どもたちも、戦争によるトラウマ体験をしています。そのような子どもたちへの支援も展開していかなければならないと考えています。

保護者やウクライナに留まっている子どもたちへの支援も必要だとアナスタシアさんは考えます

――中学生以上の子どもたち、保護者、ウクライナに留まっている子どもたちと、支援を必要としている人はまだたくさんいるんですね。最後になりますが、日本からの支援はどのように貢献していると感じますか?

アナスタシアさん 日本の皆さんは長期的な支援をしてくれています。PSSは長期的かつ継続的に行っていく必要があるので、とても助かります。引き続き関心を持ち続けていただきたいです。

インタビューを終えて(インタビュー担当者より)

紛争が身体的な面だけでなく心理的な面にも大きな影響を及ぼすことを再認識しました。心の傷は認識しづらいですが、アナスタシアさんの担当されているPSSは段階的に回復を促す、大変重要な取り組みであることだと思います。しかし、まだまだ多くの人々が支援を必要としていたり、助けを求めない人がいたりと課題も多く残ります。課題の解決と継続的な支援の必要性を感じました。

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