布ナプキンと性教育でケニアの女の子に翼を
2015年1月
こんにちは、ケニアのメグアラ地域で活動している、ボランティアのイ・ウンアです。私が2014年9月~11月までの3か月間にメグアラで実施した、女子の権利向上を目指した生理用布ナプキン普及と性教育のプロジェクト、通称「Naipuko(現地語で「翼」の意)プロジェクト」を紹介します。
メグアラは、ケニアの首都ナイロビから460㎞、車で6時間半ほどの場所にあり、住民のほとんどがマサイ族です。
グッドネーバーズ・ケニアは、支援活動のひとつとして毎月プライマリースクール(8年制の初等教育)の高学年の女子生徒800人を対象に生理用ナプキンを配布しています。この活動は、女子生徒の出席率向上と衛生維持に役立っていますが、配布対象でないセカンダリースクール(4年制の中等教育)以上の女子や大人の女性達には、ナプキンの購入が大きな負担になっているという問題がありました。
経済的にナプキンを買うことが困難な人は、古い服や毛布などを利用しており、不衛生なうえに学業や家の外での活動が制限されてしまう状況でした(生理中に適当なナプキンがないため学校を休まざるを得ない生徒もいます)。また、マサイ族には早い年齢で性体験をする若者が比較的多く、性教育の必要もありました。
そこで企画されたのが、マサイの女子生徒のための手作り布ナプキン教室と性・保健に関する教育、「Naipuko」プロジェクト。繰り返し使える生理用布ナプキンを、女子生徒たち自身が手作りして使用することで、自分の体と向き合って衛生的な生活をおくり、家計の負担を軽減します。さらに、医療専門家による講義で、女性としての自分を大切にすることを学び、女性の権利に対する認識を高めることも狙いです。
対象はプライマリースクール7年生とセカンダリースクール1~3年生の女子生徒120名(ナプキン配布支援の対象であるプライマリースクールの生徒も、卒業後に役立つように参加してもらいました。プライマリー8年生とセカンダリー4年生は卒業試験準備のため対象外)。メグアラ地域の学校と協力して、放課後プログラムの形で計画しました。
1、プロジェクトの準備
最初の一か月は必要な材料の購入や学校とのスケジュール調整に費やしたほか、いくつかの学校で「手作り布ナプキン教室」を行いました。
材料の調達には、メグアラから車で2時間ほど離れた町まで行かなければなりません。しかし、メグアラ支部に一台しかない古い車はよく故障します。特に雨の日の舗装されていない道路は走りにくく、一日で往復することすら困難で買い出しに1泊2日かかってしまったこともありました。
2、プロジェクトの開始
9月の第3・4週にRomoshaプライマリースクールの女子生徒18人、Romoshaセカンダリースクールの女子生徒30人とNaipuko教室を実施した後、私はある課題にぶつかってしまいました。「どうすれば、生徒たちが自主的に、主体的にプロジェクトに参加することができるのだろう。」 生徒たち自らが必要性を感じて、主体的に参加しなければ、プロジェクトを継続していくことはできないからです。そこでグッドネーバーズ・ケニアのメグアラ支部長と事務長に相談すると、「アドボカシー(自らの主義・主張を広く社会に伝達することを目的として行う活動)強化をすると良い」というアドバイスを受けました。私は計画書を少し変更し、サークル形式で生徒たちが自主的に参加できる内容にしようと工夫してみました。
3、サークル結成
まず、いくつかの学校でサークルメンバー募集の広告を配布し、活動に興味のある女子生徒を募りました。そして先生の助けを借りて面接を行い、各学校で16人のメンバーを選出しました。以降プライマリースクールでは週3回、セカンダリースクールでは週2回のペースでサークル活動が始まりました。
4、性・保健教育
Romosha保健所の看護師さんに来ていただき、女性の体の構造や月経について、また清潔に保つ方法や月経周期の計算方法について勉強しました。月経は恥ずかしいことではないということ、自分で自分の体を大切にしなければならないことを強調して教えました。また、質疑応答を通じて、サークルメンバーの疑問を解消することもできました。
5、繰り返し使える生理用ナプキンの作製
女子生徒たちは二種類の布ナプキンを作製し、使用してみてどちらが良いかを自分で選ぶ形にしました。生徒たちはこの作業に興味津々。自分で自分のナプキンを作ったことに喜びと誇りを感じていました。ナプキンが完成した後は、その使い方と管理方法について教えました。
11月の第1週には、各自が友達一人にナプキンの作り方を教えるというノルマを掲げました。これにより、より多くの女子生徒が生理用ナプキンを作って使えるようになり、サークルメンバーも人に教えることによってより理解を深めることができたと思います。
6、今後について
いろいろと試行錯誤中ですが、参加者の自主性については引き続きの課題となりそうです。また、布ナプキンの使用においては、まだ衛生面などにおいて信頼してくれない先生も多く、先生や保護者を対象に説明を強化する必要性を感じました。 今後は、性教育の授業とプロジェクトの振り返りのほか、お母さんたちを対象にした性・保健教育を計画しています。
Naipukoプロジェクトについて
- 実施地域:ケニア、メグアラ(首都ナイロビから460km、車で約6時間)
- 対象:メグアラ地域13歳~18歳の女子生徒120人
- プロジェクト内容 :衛生的で再利用可能な布ナプキンの作り方を教える。また、使用を奨励して、マサイ族の女子生徒の健全な発育を図り、学業の継続と家計の負担低減に貢献する。性・保健教育を介して自身の体と向き合い、自分の体を大切にすることを伝える。
- 協力団体:Romoshaセカンダリースクール、Romoshaプライマリースクール、Enenkeshuiプライマリースクール、Romosha保健所、Ramasha病院
- 生理用布ナプキンのメリット
・綿100%で通気性が良く、皮膚疾患を防止できる
・正しい手順で洗濯、日光を当てて乾かすことで衛生的に使える
・不快な臭いが減る
メグアラ地域について
グッドネーバーズ・ケニアのメグアラ支部では、約7,500人(うち子ども約4,000人)を対象に支援活動をしています。教育施設は、プライマリースクールが5校、セカンダリースクールが1校あり、それぞれ約1,500人と約200人が通っています。セカンダリーへの進学率は約50%であり、地域内の成人識字率は約25%です。