世界中の子ども達に笑顔を。途上国の子どもの教育支援・緊急支援を行う国際NGOグッドネーバーズ・ジャパン

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2022.06.17 プレスリリース

【6/20 世界難民の日】「愛する人を失うのはとても簡単」モザンビーク 紛争避難民のインタビュー

「彼らは私の友人を刺し、切り刻んだのです……」それでも、「いつか状況が好転して、みんな家に帰れるようになると信じて」。

ロシアのウクライナ侵攻により、第二次世界大戦以降、最大の難民危機が発生しています。このウクライナでの人道危機と、かねてより続いているアフリカ・アフガニスタンなどの各地で発生している危機によって、世界の難民・国内避難民の総数はついに1億人(UNHCR, 2022年5月)を超え過去最多となりました。命を守るために故郷を離れ、避難先でも常に死の恐怖と隣り合わせの人々は、ウクライナだけではなく世界各地に大勢います。今回インタビューに応じてくれたモザンビークの紛争避難民であるラデさんも、友人の死をきっかけに、自分と家族の「安全を求めて」避難したひとりです。

認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは、 2004年以来、途上国における開発支援と並行して世界の難民・国内避難民への支援活動を継続してきました。現在も、ウクライナ(ルーマニアに職員を派遣)、モザンビーク、エチオピアにおいて難民・国内避難民への食糧・日用品の影響や保護活動を実施しています。 

6月20日「世界難民の日」において、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所 )が掲げる今年のテーマは「安全を求める権利」です。 1億人以上の人々が、自分と家族の命を守るために、近隣諸国あるいは国内の他の地域へ、持てるだけの荷物と抱えきれない不安を背負って避難しています。 

持てるだけの荷物を持って避難する人々

モザンビーク カーボ・デルガド州 2022年6月撮影カーボ・デルガド州では、2017年10月から2022年5月までに推計で1,251件の政治的武装勢力による襲撃、それによる4千人以上の死者(うち半数近くが一般市民を標的とした襲撃による死者)(Cabo Ligado,2022年3月)が確認されています。またラデさん一家のように現在も避難生活を余儀なくされている人口は78万人以上に上ります(IOM, 2022年2月) 。  

ラデ・アブダラ・アンラネさん、31歳

ラデ・アブダラ・アンラネさん

ラデさんはカーボ・デルガド州中西部のキサンガ郡ナトゥーゴ村で2人の弟と3人の妹を持つ長男として、農家の両親に育てられました。2015年に結婚し、現在は8歳と5歳の女の子の父親です。好きな食べ物は米と肉だと素朴な笑顔で教えてくれた彼ですが、避難民として非常に不安定な暮らしを送っています。

「この戦争で学んだのは、愛する人を失うのはとても簡単だということです。」

最愛の家族とともに

2021年2月、ラデさん一家は多くの若者、老人、子どもたちと一緒に、カプラナ(アフリカ柄の布)の袋に必要なものを詰めて、キサンガ郡からメトゥージェ郡まで約80キロの道のりを24時間かけて歩いて逃げてきました。故郷を離れる決意をしたその時の状況について彼は深呼吸して言いました。

過去の記憶を語るラデさん

「キサンガを離れたかったわけではないんです。家々が焼き払われ、ドミンゴスという友人が、テロリストに捕まったときに心を決めたんです。彼らは私の友人を刺し、切り刻んだのです……」

彼の一家は、メトゥージェ郡のマノノ小学校に作られた一時避難所に1ヶ月間滞在しました。「最初の2、3日は何もなく、飢えに苦しみましたが、その後政府が少しずつ食料を配り始めました。」
2021年3月23日、ラデさん一家は現在、約550世帯2400人が暮らしているナトゥーゴ再定住地区に送られました。
「私たちがナトゥーゴに到着して以来、政府は私たちをよく助けてくれています。」

しかし自分の土地で農業を行い、ヤギやアヒル、ニワトリの飼育を続けてきた彼にとって土地を離れて暮らすことは収入を失うことを意味します。

彼は再定住エリアに着いてから、農業によって生計を立てようと試みましたが、ホストコミュニティの住民が土地の所有権を主張したため、避難民による農業活動や木の伐採は許されませんでした。しかし生活のために隠れて木の伐採を行い木炭を生産し、月々1500メティカル(約3000円)の収入を得ていました。 モザンビーク政府が定めた労働基準法による農家の最低賃金が、月々約1万円であることを鑑みると、これだけでは到底生活は成り立ちません。

「娘たちには、ここではなく、キサンガで育ってほしい。ここでは戦争から逃れた人たちとして常に辱めを受けるからです。すべてのものにすでに所有者がいて、私たちの所有物はなにもないからです。」
と彼は怒りと失望を露わにしました。

収入面以外でも再定住地区での生活には苦難が付きまといました。2022年3月に故郷に戻った実の父親とは連絡がつかず、安否がわからないと言います。

さらに、ひどい下痢症状に苦しむ次女を保健センターに連れて行ったところ、慢性栄養失調の疑いを指摘され3日間の治療を要したのも最近のことです。現在は回復していると安堵の表情を見せるものの、5歳未満の子どもの43%が深刻または中程度の発育不良であるモザンビーク(UNICEF, “Water, sanitation and hygiene (WASH)”)では栄養失調で命を落とすことも珍しくありません。また世界中で見てもいまだに安全な水があれば防ぐことのできる下痢やマラリアなどの感染症が、5歳未満児死亡の主要な原因となっています(UNICEF 2021年12月 ”Under-five mortality”)。

娘たちが生まれたときが人生でいちばん幸せな瞬間だったと話した彼は、母親、兄弟、妻そして娘が無事に再定住エリアで生活していることは幸運なことで、どんなことがあっても家族とともに過ごせる時間をあきらめないと、強いまなざしを見せました。

 

衛生啓発プロモーターへ

グッドネーバーズは、 2021年12月から、モザンビーク北部カーボ・デルガド州の国内避難民が生活する再定住エリア、および避難民を受け入れるホスト・コミュニティ居住地を対象として、水衛生支援事業※を行っています。( https://www.gnjp.org/reports/detail/220324_taki/ ) 
※ジャパン・プラットフォームのモザンビーク北部人道危機対応助成事業

ラデさんは1年弱の厳しい生活のあと、コミュニティリーダーから声を掛けられ、グッドネーバーズが実施するプロジェクトで衛生啓発プロモーターとして活動を始めました。女性5人、男性4人の計9人を率いるチームリーダーとして、他の89人のプロモーターとともに、手洗い、水の処理と貯蔵の仕方、トイレの使用と維持管理の重要性、月経衛生管理、水感染病予防や廃棄物処理など、地域の衛生習慣を啓発する役割を担っています。

衛生啓発プロモーターとして活動するラデさん


「キサンガに戻りたいけど、故郷でもこの活動を続けられたらもっと幸せ!」

と笑顔で語るラデさんは、下痢やマラリアの原因となる水の衛生状態の悪さや、高齢者に多い野外排泄などの問題が、衛生促進活動や衛生キットの配布によって改善されたことを嬉しそうに説明してくれました。

そして最後に、私たちの目を見て、「このプロジェクトのおかげで、地域は大きく改善されました」と感謝の言葉を述べました。
彼が暮らすントコタ地域と、その周辺のナミナウェ地域の約1万5千人を対象に、グッドネーバーズは水施設や家庭用トイレの建設、せっけんや月経用ナプキンを含む衛生キットの配布を行っています。

グッドネーバーズによって配付された衛生用品を受け取る避難民の女性
グッドネーバーズによって建設中の給水施設


いつ家に帰れるのか、置いてきたものが全部見つかるのか、考えを巡らせるだけで不安なことがたくさんあるといいます。しかし彼は、同じ境遇の仲間に対して「いつか状況が好転して、みんな家に帰れるようになると信じて」と励まし続けています。
ラデさんを含む避難民のみなさんが、水衛生環境の改善を通して健康と安全な暮らしを得られるように、グッドネーバーズは支援を継続してまいります。

現在ウクライナ危機によって、 1400万人以上の人々が国内外への避難を余儀なくされており、グッドネーバーズ・ジャパンも避難先への食糧・医療品の支援活動を実施しています。 
一方、ウクライナ危機が国際的に注目されていますが、世界各地で長期化する紛争により人々の関心が薄れていく中、置き去りにされてしまっている難民・国内避難民がいます。その存在を私たちは忘れてはなりません。 

学校に行き、仕事をし、家族と過ごす、そんな日常が突然奪われること。
さっきまで話していた友人が目の前で死ぬこと。
身の危険を感じて夜も安心して眠れないこと。

これは、私たちと同じ世界に生きる人々が、今、まさに直面していることです。

グッドネーバーズは、難民・国内避難民の一人ひとりに思いを寄せ、UNHCRの今年のテーマである「安全を求める権利」を追求し、彼らが理不尽に失った生活を取り戻すために支援を行っていきます。

 

■認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(https://www.gnjp.org/)について
国際組織であるグッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004年に日本事務局を開設。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、アジア・アフリカの7カ国を対象に支援活動を行っています。2013年より、公益性の高い団体である「認定NPO法人」として東京都から認可を受けています。

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