新型コロナウイルスの感染拡大による生活への影響に関するアンケート調査報告(12月)
新型コロナウイルス感染拡大により、非正規雇用の割合の高いひとり親家庭に経済的影響がでていますが、子どもにも心や身体への影響が出ています。
ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」を運営する認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(東京都大田区)は、今年5月・9月・12月と継続して、食品支援に申し込んだ 「グッドごはん」利用者にアンケート調査を行い、新型コロナウイルスの影響が出始める前との収入や食事の変化を調べました。また、12月のアンケートでは大阪府での調査も開始し、コロナ禍による生活の変化が、子どもにどのような影響を及ぼしているかを聞きました。
前回のアンケート結果はこちら
【12月のアンケート回答者について】
アンケートに回答したのは、認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが運営する、ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」を利用する、「ひとり親家庭等医療費受給者証」を持つ東京近郊および大阪のひとり親です。
※ひとり親家庭等医療費受給者証:18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証
- 実施日:12月1日から14日
- 対象者: 「グッドごはん」に食品を申し込んだ東京および大阪の利用者
(東京は主に大田区、品川区、その他東京・神奈川・埼玉 / 大阪は大阪府を指す) - 有効回答数:東京592名 / 大阪266名
収入への影響について
12月の調査では「直近で受け取った収入について」以前との変化を聞き、東京については5月・9月の結果と比較しました(大阪では5・9月は調査実施せず)。
12月はわずかながら「失業したが新たな仕事に就いた」などの回答もありましたが、依然として6割以上のひとり親家庭の収入が減った状態のままでした。東京近郊と大阪市での地域差はさほど無いように思われます。
収入が減った理由については、「勤務時間の短縮・ボーナスカット」等が最も多く、続いて失業など全く仕事が無い状態の人が1割以上を占めました。「その他」では、心身の健康状態が悪化し働けなくなっているという回答が目立ちました。
収入に関して、新型コロナウイルスの感染拡大の第三波に伴う外出自粛、GOTOトラベルの一時停止による家計への影響は今後出てくるものと思われ、引き続き注意が必要と考えます。
実際の収入に関するコメント
- 月給10万以上あったものが、7,8万程度になってしまった。
- 失業後、面接を受け続けていますが、20社以上落ちました。精神的にもダメージを受け、鬱気味ですが諦めずに探している状態です。
- 子供が風邪で熱をだして休みをとったら、「コロナかもしれないから会社にこないでほしい」と一方的に派遣契約が途中で切られいきなり無職になりました。
- 子供4人育ててきて ひどい時はガスや電気 水道まで止まった事がありましたがなんとか普通に生活できるようになってきたとこで 収入が減ってなかなか厳しい状態です
- 子供がお金をかなり気にするようになり、うちにはまだお金はあるの?クリスマスプレゼントは欲しいものがないからいらない。ご飯ももっと少なくていいよ!お菓子もお金ないからいらないと、言うようになりました。親としては本当に悲しくなりますし、悔しいし、情け無いしで子供の前で泣いてしまう事が多くなりました。
食事への影響について
食事に関しても引き続き、親が中心に量や回数を減らし、子どもにも一部影響が及んでいる状態が続いています。「一度も食事ができない日があった」という回答する人も、東京・大阪どちらにも見られました。また、食事回数が3回でも、お昼はインスタントラーメンが増えた、肉や魚を買わなくなった等、食事の質が落ちているという回答も見られました。
学校等が休みの期間中に食事の回数が3回から2回に減る子どもも2割程度いると思われ、冬休みの栄養不足が懸念されます。また、クリスマスやお正月など、季節や行事、文化を「食」を通して楽しむという子ども時代の経験が奪われてしまうことも心配です。
実際の食事に関するコメント
- 仕事はないのにお腹は空く。中学生の息子は170センチで55キロあったのが47キロとかまで落ちてしまい、自分が死んだときの保険の計算までしてしまいました。
- 毎朝食パン一枚で学校に送り出して申し訳ない気持ちでいっぱい。
- 食事は一日に2回食べられたら良い方。
子どもへの影響について
今回は、初めて「コロナ禍による社会の変化や生活の変化で、お子さんの様子に影響(普段の言動、表情、生活など)がありますか?」という設問を設けました(任意回答)。
その結果、どちらの地域でも4割に「影響がある」という回答が見られ、そのなかでは不登校やストレス、ストレスからくる子どもの健康への影響が特に多くみられました。
寄せられた声を見ると、チック症、抜毛症、痙攣、不安障害、統合失調症等、実際に身体へ影響が出ていたり、友達との関係が悪化、家で暴言が増えた、進学を諦めるようになりました等、子どもの心と身体、そして将来に取り返しのつかなくなるような影響が起き始めていると言わざるを得ない状況です。
子どもの様子について実際の声
- 授業が詰め込みになっているようで、本人の勉強が追いついていない。また先生が厳しくなり精神的なものから頻尿になっている。
- 事あるごとに「お金かかってんのにごめんな」とか「高い?安い?」と聞いてきたりする。
- 私は至って普段と変わらず接しているのに「ママ何か悲しいこと考えてない?」とか「ママがいなくなったら生きていかれへん」「お手伝いさせて」と言ってくれ「どうしたん?」って聞くと「できるだけママの力にならないとママが早く死んじゃうから」と言う。「家族」という言葉をよく口にするようになった。一時期チック症状みたいのもみられた
- コロナが流行ってから生活リズムが狂って、中1の息子が起立調節障害になり、めまい、動悸、不安障害になり新学期から学校に行けなくなり、今は一日一時間しか学校に行けてません。
- 家が狭いので、兄弟喧嘩が絶えない。上の子が下の子にストレスをぶつけ、下の子が抜毛症になった。
- 表情が乏しくなり、以前のやる気が見られなくなった。
限界を迎えているひとり親
現在、新型コロナウイルスの影響でひとり親がその日を生きるために続けてきた仕事から離れざるを得ない状況が多くみられます。ただでさえ就職に不利と言われているひとり親が、今の社会状況で仕事を見つけるのは本当に難しいことです。
ひとり親家庭には悲しいことに、「必死で働けば何とかなるだろう」といった批判が付いて回ります。たしかに、心身ともに親子が健康ならば、必死で働き子どもを育てることは可能かもしれません。
しかしそこに、「心または身体の病気」「障害」「介護」「子どもの障害や病気」「誰かの借金の返済」などひとつ、または複数の要素が追加されたらどうでしょうか。乳幼児がいて実家に頼れなかったり、子どもが4人もいる場合はどうでしょうか。ひとり親に限らず、人が困窮状態に陥るのは、複合したいくつかの要素が重なる場合が多いと言われています。そこへ「新型コロナ」が加わったら、ただでさえ困難を強いられている家庭は、金銭的にも精神的にも限界を迎え、その影響は子どもたちに及びます。
グッドごはんの取り組みについて
2人にひとりが相対的貧困と言われるひとり親家庭の問題は、「誰かが悪い」で済むような問題ではなく、社会の問題です。
グッドネーバーズ・ジャパンは、2020年3月に政府が臨時休校の要請をする考えを示した際に、ひとり親家庭が困窮すると考え、支援の強化に努めてきました。
関東(東京・神奈川・埼玉・千葉)では、配付対象者数を月165世帯から約600世帯に増やし、8月からは大阪市でも200世帯へ提供を開始するなど、できるだけ多くの利用者に食品を提供できるよう努めております。
多くの企業や個人から食品や資金の寄付をいただきましたが、現在急増する利用者に対して、食品の調達が課題となっており、ひとり親家庭の子どもたちがきちんと食事を取れるよう、引き続き協力を募っております。
食品を受け取った利用者の声
- ひとり親の家庭では、努力ではどうにもならない時期があるのだと身を持って知りました。この乗り越えなければならない時に、助けてくださる方々の存在はとても大きく、感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。