世界中の子ども達に笑顔を。途上国の子どもの教育支援・緊急支援を行う国際NGOグッドネーバーズ・ジャパン

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2026.02.21 活動報告

【ウクライナ危機】全面侵攻から4年、ウクライナで続く「こころの支援」<前編>

ロシアによる全面侵攻から4年。ウクライナを巡る報道が落ち着きを見せる一方で、現地では「戦争が日常の一部」となるという、出口の見えない困難が続いています。  

現地で求められる支援の形は大きく変わっています。 
命をつなぐための「緊急物資支援」から、壊れそうな心に寄り添い、生きる力を取り戻すための「心のケア(心理社会的支援)」へ──。 

GNJP職員へのインタビュー

今回は、全面侵攻直後からウクライナ支援に携わってきたグッドネーバーズ・ジャパン(GNJP)の職員2名にインタビューを行いました。
ウクライナで駐在員として活動する大塚と、日本で事業を担当する太田に、現地で行っている心理社会的支援(以下、PSS)を中心に現地の変化や今の状況を聞きました。

侵攻直後から関わり続けて 

太田:2022年3月の初動調査*で、ウクライナの隣国・ルーマニアに派遣されたのが始まりです。その後、日本本部で事業補佐や会計確認、ドナー対応を担当し、2023年にはスチャヴァに約1年駐在しました。現地事業にも直接関わっています。 

* 人道支援における初動調査:人道危機発生直後に現地へ向かい、被害状況や必要な支援(水、食料、医療など)を迅速に調査する活動 

大塚:私も侵攻直後から関わっており、現金給付、物資支援、MHPSS(精神保健・心理社会的支援)など、複数の事業運営を担当してきました。 

ウクライナ人職員とミーティングをする大塚

大塚: 侵攻直後は、国際社会からあらゆる支援が届けられました。しかし、戦争が長引くにつれ、年々支援の「先細り」が顕著になっています。多くの人々が経済的な自立を迫られる中、軍への動員で男性労働力が減少し、これまで男性中心だった職種に女性が就くケースが増えています。 

「必要」から「不可欠」へ変わったPSS

太田:長期化によって、ニーズはより複雑化しています。攻撃の不安の中で廊下や地下で寝る生活、オンライン授業になった子どもたち。絶え間ないストレスが日常化しています。 以前、私たちの事業に参画していた現地の心理士が「PSSは必要というより不可欠だ」と言ったことがあり、それが強く印象に残っています。 

大塚:WHOによると、ウクライナで過去1年に不安・うつ・ストレス症状を経験した人は、全人口の7割以上にのぼります*。インフラ攻撃により、氷点下で暖房も電気もない生活を強いられる。暗闇と寒さは、メンタルヘルスに深刻な影響を与えます。今後、ニーズはさらに高まると見ています。 

* Health needs assessment of the adult population in Ukraine (WHO,2025) 

冬に備え修繕した窓とその周りに広がるクラスター弾の跡

PSSとは何か──「独りではない」と感じてもらう命綱

太田:ウクライナは戦争中といっても、前線以外の地域では市場は機能しています。日本の方がイメージするような「難民キャンプで炊き出し」という状況ではありません。 でも、いつ来るかわからない空襲への恐怖、家族との別れ、学校に通えない――それまで当たり前にあった日常が著しく制限されている状況です。 心理士や支援を受けた方へのインタビューでは「独りぼっちで絶望的な状況だと感じた」 と語る人が少なくありません。PSSは、そのように感じている人に寄り添い、「独りではない」と感じてもらう命綱のような活動だと思っています。 

大塚:緊急支援や物資支援が即時的なニーズに応えるものだとすれば、PSSは支援後も人々が“次の一歩”や“新たな可能性”を見出していける点に大きな特徴があると思います。PSSで心的外傷から回復したことで、以前よりも精神的に強くなったり、肯定感を取り戻したりするといったポジティブな変化がもたらされます。その結果、同じ苦しみを経験した人を助けたいという気持ちが生まれる傾向があり、支え合いの輪が広がります。すなわち、PSSは支援を受けた方自身の経験が社会に還元される波及的効果があることから、大きなポテンシャルを秘めた重要な活動であると考えています。 

ゼロからのスタート──専門家の力を借りて 

太田:PSS事業を実施する前、事業ドナーであるジャパン・プラットフォームのPSS勉強会に参加し、桑山先生*のお話を伺いしました。GNJPには日本国内の事業におけるPSSの実施経験はあり、ウクライナでニーズが高いと認識しているものの、適切な支援の進め方を検討している段階にありました。そこで、勉強会の後、思い切って桑山先生にご連絡したところ、当事業の趣旨にご共感くださり、専門的な知見をもとに事業をご監修いただけることになりました。私自身もウクライナのファシリテーターたちに交じり、現地でPSS研修を受け、理解を深めました。 

* 桑山紀彦先生 
心療内科医、精神科医である桑山先生は認定NPO法人「地球のステージ」の代表 でもあり、これまでPSSの専門家として世界各地で心のケアの経験をお持ちです。当団体や提携団体のスタッフにもPSSに関する研修・指導をしていただいています。   

太田: ウクライナでは比較的早い段階からPSSの必要性が認識されていたと思います。特に子ども向けのPSSは、学校がオンライン授業になったり、避難生活で住み慣れた場所や家族との別れを経験している中で、重要性を感じていた方が多かったように思います。一方で、大人向けは難しい面もありました。避難しないで頑張っている人がいるのに自分が弱音を吐くわけにはいかない、心のケアは弱い人が受けるものだ、などいろいろな感情や考えから、必要としていてもなかなかPSSへの参加に踏み切ることができないという問題がありました。 

変化を生む瞬間──支え合いの輪の広がり

大塚:グループセッションの参加者は、最初は緊張した面持ちですが、回を重ねるごとに徐々に打ち解け、最後には積極的に発言するようになる傾向があります。この変化を促しているのは、ファシリテーターによる発言しやすい場の雰囲気づくりです。グループセッションにおいて、いかにファシリテーションが重要であるかを実感します。 

太田:ルーマニアに避難してきたウクライナの子どもたち向けのPSSを実施していた際、提携団体の担当者から印象的な話を聞きました。避難してきたばかりの子どもたちは不安定な状態の子が多く、子どもたちの間でけんかをしたり、スタッフに暴言を言ったり、夜寝られない子が多かったそうです。しかし、PSSを実施する中で、スタッフと子どもたちが本音を話す機会が増え、子どもたち一人一人を深く知ることができ、良い関係を築くことができたと言っていました。 

地下シェルターで活動する子どもたち

支援する側を支えるもの

大塚:ウクライナの子どもたちは、厳しい寒さの中で温かい食事を食べられず、お風呂にも入れず、学校や幼稚園にも行けない日々が続いています。家の窓は防寒のためぬいぐるみで覆われ、服を何枚も重ね着した子どもたちは高層住宅の真っ暗な階段を上り下りしています。過酷な生活を強いられている現地の子どもたちの写真や映像を見るたびに心が揺さぶられます。 

太田: 日々予測できない情勢の変化がある中で、自分自身ではどうしようもできないことに対して感情を引っ張られすぎないよう、仕事やどうしても情報を追ってしまうSNSなどから距離をとって、自然の中で体を動かすように意識しています。また、ルーマニアで出会ったウクライナ難民の子どもが描いてくれた絵も、私が支援を続ける原動力の一つとなっています。緑あふれる素敵な景色が描かれていて、この絵に描かれたような平和な光景を一日でも早く子どもたちに取り戻したいと強く感じています。 

大塚:ウクライナの人々と一緒に仕事をする中で、最も印象的なのは団結力の強さです。目の前の大きな困難を共に乗り越えようと、それぞれが個々の責任を理解して主体的に協力し合う姿勢が、大きな原動力となっていることを日々実感しています。 

現地でのファシリテーター研修の様子

今後のウクライナ支援について 

太田:日々日本での報道が減っていきもどかしい気持ちもありますが、昨年から日本企業が今後の復興に向けた動きの一環で活動について当団体に問い合わせを寄せてくださる機会も増えてきたように感じます。PSS以外にも様々な事業を展開しているので、今後は企業との協働も視野に入れていきたいです。 

おわりに

空襲の恐怖、過酷な寒さ、生活インフラの不安定さ、家族との離別や将来への不安―― 
そうした状況が慢性的に続く中で、PSSは単なる付随的な支援ではなく、人が人として生き続けるための基盤となっています。 

孤立感をやわらげ、安心できるつながりを取り戻し、自らの力を再び感じられるようにすること。その積み重ねが、国や地域社会の復興を支える土台となっていきます。 

次回後編では、ウクライナのPSS事業を監修していただいている PSS専門家・桑山紀彦先生に、PSSについてお話を伺いました。
戦況の長期化とともに増えているPTSD(心的外傷後ストレス障害)ですが、医療との連携も不可欠でありながら、PTSDに至る前の心のケアは専門家だけのものではない、と先生は語ります。

困難な状況にいるウクライナの人々は何を必要としているのか、そして私たちは何ができるのか――
「誰もがレジリエンス(回復力)」を引き出せる社会を築く必要性とともに、専門的視点からの答えをお届けします。 

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