子どもの食の貧困・体験の格差是正に向けて――実行団体の活動現場を訪問しました①(休眠預金活用事業)

困窮世帯の子どもたちは、十分な食事をとることや体験活動の機会を得ることが困難な場合があり、適切な支援が求められています。
この状況を受け、グッドネーバーズ・ジャパンは、一般財団法人日本民間公益活動連携機構(所在地:東京都千代田区、理事長:二宮 雅也、英文名:Japan Network for Public Interest Activities、略称:JANPIA)の「2024年度 物価高騰及び子育て対応支援枠<第3回> 休眠預金等活用法に基づく資金分配団体」として、子どもの「食」や「体験」に関する課題を抱えた低所得のひとり親家庭等を支援する団体に対し資金的・非資金的サポートを行い、支援活動の促進に取り組んでいます。
グッドネーバーズ・ジャパンは2025年9月~10月にかけて、事業実行団体の活動現場を訪問し、各団体の取り組みの様子を視察しました。
本記事では、九州で支援活動を実施する4団体への訪問の様子をご報告します。
(各実行団体が実施する本休眠預金活用事業内容の詳細はこちらよりご覧いただけます)
特定非営利活動法人空家・空地活用サポートSAGA
| 所在地 | 佐賀県 |
| 申請事業名 | コミュニティフリッジ利用者200世帯の子供の体験格差解消事業(副題)地域CSO・企業との連携による継続した体験格差解消を目指す |
本団体は、佐賀市における約200世帯のひとり親家庭を対象に、食品支援と子どもの居場所づくりを行っています。
グッドネーバーズ・ジャパンは今回、食品をいつでも受け取れる「コミュニティフリッジ」と、子どもたちが安心して過ごせる「居場所そら」を訪問しました。
・食品支援の場「コミュニティフリッジ」
「コミュニティフリッジ」は、登録したひとり親家庭が24時間365日、好きなタイミングで食品を受け取れる支援拠点です。プライバシーを守り、利用者が気兼ねなく訪れられるよう、建物の外には施設名などの表示をしていません。
内部には「メッセージコーナー」があり、利用者が感謝の言葉やメッセージを自由に残せるようになっています。訪問時にも、食品を受け取りに来た方が手書きのコメントを貼っておられました。また、農家などの支援者からの温かいメッセージも掲示されており、支援者と利用者の思いが交わる場所となっています。


・子どもたちの笑顔が集まる「居場所そら」
「居場所そら」は、空き家をリフォームしてつくられた子どもたちの居場所です。
内部は少し迷路のようなつくりで、2階には畳の部屋や本棚があり、勉強したい子どもがいる場合は1部屋の扉を閉めて集中できるようにしています。3階にはバスケットゴールなどの遊具があり、訪問時には小学生の子どもたちが元気いっぱいに走り回っていました。


この居場所は、支援対象の保護者を雇用して運営されています。子どもたちのためにおにぎりやお菓子を用意し、温かな交流が生まれるよう工夫されています。
利用する子どもたちは近隣の学校に通う児童が多く、学校を通じた周知も進められています。
NPO法人いるか
| 所在地 | 福岡県 |
| 申請事業名 | 福岡県における困窮世帯のこどもやひとり親家庭等への食提供及び体験事業 |
本団体は、福岡県内の生活困窮世帯やひとり親家庭の子どもたちを対象に、急速冷凍弁当の製造・配布を中心とした食支援を行っています。また、学習支援や食事の機会の提供を通じた子どもたちへの居場所づくりにも取り組んでいます。
今回の訪問時は、子ども食堂形式でお弁当配布を行っている現場に伺いました。
・子ども食堂形式で実施するお弁当配布の取り組み
利用の申し込みは月単位・先着順で受け付け、1世帯あたり月5回までとすることで、多くの家庭が利用できるよう工夫されています。お弁当の内容は業者と相談して決め、子どもが食べきれるサイズに調整。子ども食堂形式でお弁当を提供するときには、スタッフが汁物や小鉢を手づくりして添えることもあります。
会場にはアンケートフォームのQRコードが設置され、メニューのリクエストや感想を自由に伝えられるようになっています。


当日の会場では、親子で訪れた利用者が別の家庭と会話を交わすなど、和やかな雰囲気が漂っていました。利用者がスタッフと笑顔でやりとりする様子からも、食事を通じた心のつながりが感じられました。

特定非営利活動法人フードバンク北九州ライフアゲイン
| 所在地 | 福岡県 |
| 申請事業名 | 子どもの安心安全な居場所づくりにつなぐための食料支援を基盤としたつながりづくり事業 |
本団体は、北九州市で経済的な困難を抱える子育て家庭を対象に、食料支援や居場所づくりを実施しています。また、支援対象家庭の状況に応じて、連携先の福祉施設や行政機関へつなぐ「つながりづくり」支援を行っています。
今回は、2つの支援拠点を訪問し、活動の様子を見学しました。
・手作りと工夫で築く子ども支援
「つきだテラス」は、もともと児童館だった施設を活用して運営されている拠点です。地域に開かれた場として親しまれ、現在は2階を子どもの居場所や子ども食堂として使用しています。

当初は厨房がなかったため、スタッフが手作りで整備。食品保管倉庫は他団体と共用していますが、多くの食品や物品を同団体が管理し、基本セット+必要に応じた追加品の提供という形で柔軟に支援を行っています。
倉庫内には食品だけでなく、寄付されたランドセルや洋服、絵本なども並び、家庭のさまざまなニーズに対応できる体制が整えられていました。


・子どもたちの居場所を支える場
商店街の一角にある「中央町事務所」は、1階が倉庫、2階が事務所、3階が子どもたちの居場所として活用されています。

3階のフロアは、学習スペースと遊びスペースに分けて活用。大学生や高校生ボランティアによるマンツーマンの学習支援が行われています。地域の講師も加わり、子どもたち一人ひとりに寄り添ったサポートを提供しています。
もともと子ども食堂を利用していた子どもや、支援活動の中でつながった子どもたちが利用していて、訪問時は14名在籍とのことでした。
一般社団法人福岡国際市民協会
| 所在地 | 福岡県 |
| 申請事業名 | 福岡県における海外ルーツの子育て家庭を含む低所得家庭の子どもを対象にした食支援および体験活動の提供 |
同団体は、非課税世帯やひとり親家庭など生活に困難を抱える家庭、さらに外国にルーツを持つ家庭に支援が届くよう、食支援および体験活動を提供しています。
今回は、子ども食堂の現場を訪問しました。
・多様な家庭が集う子ども食堂
訪問した土曜日は、協力先の料理店で子ども食堂が開催されていました。
運営は団体スタッフが行い、調理は店舗の方がボランティアとして担当。受付や子どもたちの対応には、3名ほどのボランティアも参加していました。
食事は30〜40人分を用意し、子どもたちは好きなだけ食べられる形式で提供されています。

必要に応じて追加調理も行われており、食事の量や内容に柔軟に対応していました。ドリンクサーバーは自由に利用できますが、ジュースは1杯まで、その後は水を飲むようにするなど、栄養バランスを意識した工夫も見られました。お菓子も個数を制限しながら提供されています。
参加者は、日本の家庭の親子が約20人、外国にルーツのある親子が約15人。近隣だけでなく、電車で通ってくる子どもや、スタッフによる送迎で参加する家庭もみられました。

今回の訪問では、各実行団体が地域の課題に寄り添いながら、子どもたちを支えるために多様な工夫を重ねている姿が印象的でした。
グッドネーバーズ・ジャパンは、こうした現場の取り組みがより良い成果につながるよう、今後も実行団体に対して適切なサポートを行い、支援活動を促進してまいります。
▶ 本休眠預金活用事業の詳細等はこちらのページからご覧いただけます
https://www.gnjp.org/work/domestic/kyumin2024/
▶ 休眠預金等活用とは
「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」(休眠預金等活用法)に基づき、2009年1月1日以降の取引から10年以上、その後の取引のない預金等(休眠預金等)を社会課題の解決や民間公益活動の促進のために活用する制度として、2019年度より開始されました。(参考:JANPIA Webサイト)




