
「サングラの子どもの家」のいちばんのいたずらっ子、 ビカシ・タマン(8)。この子と一緒に過ごしてもう 9 ヶ月が過ぎた。夕方勉強をしていると 10 分もしないうちに机に顔をふせて寝てしまう。 ご飯を食べていても、いたずらに夢中で食べ終わるのがいちばん遅い。
「子どもの家」のトイレのドアに袋を使っていた去年の冬。砂糖きびで囲んで作ったトイレに入っていると、ドアをぱっとめくって入って来てはバケツの水を自分ですくって行くのだ。いつも私をびっくりさせる子。半径 1 メール以内にビカシが近づいて来ると、顔が見えなくても誰だかわかる。まずおしっこのにおいがするし、後ろから服を引っぱりながらいたずらをするか、腰に抱きついて来て“ Teacher~" と呼ぶからだ。授業中は、集中力がなくいつも怒られてばかりだ・・・
ビカシの家は、「子どもの家」の26人の子どもたちの中で“いちばん”遠い。ここサングラの村に来てすぐに子どもたちの家を訪問する機会があったのだが、初めて行った家がビカシの家だった。その時はネパール語もあまり通じず、どこへ行くのかも分からず、約2時間以上も“登山”ばかりした覚えがある。何度も休憩しながら汗をかきかきやっと着いた山頂の古びた家が、ビカシの家だったなんて・・到着した後やっと気づいた。
大部分のネパールの人々は、暗い土の家の中で動物と一緒に暮らしていることが多い。ビカシの家もそうだった。ビカシのお姉さんは、頭の傷が治療できず化膿していた。お父さんはずいぶん前に亡くなっている。こういう事情だからなのか、ビカシもやはり3歳のとき目の病気を治療できずに、片方の目が見えない。空洞になった目の中に異物が入って、目やにでふさがっていて皮膚まで異常をきたしいつも皮膚薬を塗らなければいけない。目は脳とつながっているので、脳まで損傷することもあるというのに・・・眼帯でもさせてあげたい気持ちでいっぱいになった。
ネパール語で Bikash は、 Development 、発達、開発、発展という意味があると言う。私たちはビカシを desh ko bikash(development of country ―国の発展、開発 ) というニックネムで呼んだ。いつからか私の心の中では、本当にこの小さないたずらっ子、ビカシが名前の通りになるだろうと信じるようになった。

子どもたちに ”You are the light of the world” という言葉をおしえたことがあった。暗ければ暗いほど、光は明るく輝くということも。夜になるといつも波が押し寄せるかのように、蛍がたくさん飛びかう。 あるとても暗い夜、ビカシがほかの男の子たちと菜の花畑で、蛍を何匹かつかまえて自分のシャツの中に入れて言った。
「せんせ〜、見て。僕は暗い世の中の光だよ〜!」
子どもたちや、ビカシと共に過ごす1年は本当に短い記憶だろう。でもその間に植えられた大切な種は、きっといろいろな未来を花咲かせる実になると信 じている。その事が私がサングラで過ごして来た最も大きな理由であり、希望だと言える。特にビカシに対して。今は毎日おしっこでぬれたズボンを洗濯したり お風呂に入れてあげたり忙しいけれど、この夢多き純粋な子どもたちにネパールの未来を期待している。精神的にも物質的にもまだ暗いこの国、ネパールにビカ シや子どもたちがきっと光をはなつ明日が待っているだろう。